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自然突然変異の発生と抑制の分子機構

 自然突然変異の起源を明らかにするために、DNA複製のエラーと酸素ラジカルによるDNA損傷を主要な研究対象にして、分子遺伝学の手法で研究を進めています。最近になり、DNA損傷を修復する細胞機能が逆に突然変異を引き起こすことを発見しました。また、細胞の増殖環境が自然突然変異の発生におよぼす影響についても研究を始めています。

この研究テーマに関連する発表論文とその解説

  • Hasegawa K, Yoshiyama K, Maki H.(2008)
    Spontaneous Mutagenesis Associated with Nucleotide Excision Repair in Escherichia coli.
    Genes to Cells 13, 459-469 (PubMed18429818)

     準備中。

  • Kanie, S., Horibata, K., Kawano, M., Isogawa, A., Sakai, A., Matsuo, N., Nakanishi, M., Hasegawa, K., Yoshiyama, K. and Maki, H. (2007)
    Roles of RecA protein in spontaneous mutagenesis in Escherichia coli.
    Genes Genet Systems 82(2), 99-108.(PubMed17507776)

     自然突然変異の発生には様々な要因が関与するが、最近になり、酸素ラジカルなどによる細胞内での自然DNA損傷が重要な要因として浮かび上がってきた。この論文では、自然突然変異の発生を鋭敏に検出する実験系を新たに考案して、その実験系を用いて自然DNA損傷の発生頻度の推定や、自然DNA損傷が自然突然変異にどの程度の寄与を果たしているかを解析した。その結果、自然DNA損傷の発生頻度は自然突然変異の発生頻度よりも少なくとも数倍は高く、主として組換え修復経路により突然変異を引き起こさないように処理されていることが分かった。この組換え修復経路が欠損した場合には、フレームシフト変異と欠失変異の発生頻度が野生株の10倍程度に上昇することが明らかになり、この経路で主要な役割を果たすrecA遺伝子はミューテーター遺伝子であることが初めて示された。

  • Sakai, A., Nakanishi, M., Yoshiyama, K. and Maki, H.(2006). Impact of reactive oxygen species on spontaneous mutagenesis in Escherichia coli.Genes Cells 11, 767-778.( PubMed16824196 )

     突然変異、特に自然突然変異の発生は生物進化の原動力であると同時に、遺伝情報の正確な伝達を脅かすことにより細胞機能の低下や欠損、癌や遺伝病などの各種の疾病の原因となっている。しかしながら、自然突然変異の起源については不明な点が多い。これまでの研究から、自然突然変異の原因となる前変異損傷の発生には細胞に内在する何らかの要因が関与すると考えられているが、今回、我々は自然突然変異の少なくとも一部分は酸素呼吸で生じる酸素ラジカル、特に水酸ラジカルによる酸化的DNA損傷に起因することを世界で初めて明らかにした。大腸菌は酸素が全くない環境(超嫌気的培養環境)でも増殖することが出来る。このことを利用して、その環境下で培養した大腸菌で生じる自然突然変異の解析を行い、通常の大気中で培養した大腸菌での自然突然変異の発生頻度や変異の種類、発生部位の特異性と比較することにより、酸素依存的な自然突然変異の存在を明らかにした。さらに、詳細な解析を行った結果、酸素に依存する自然突然変異は主として塩基置換であり、好気的細胞増殖での自然突然変異の約8割が酸素に依存していることを示した。

  • Yoshiyama, K., and Maki, H. (2003). Spontaneous hotspot mutations resistant to mismatch correction in Escherichia coli: Transcription-dependent mutagenesis involving template-switching mechanisms. J. Mo.l Biol. 327, 7-18. ( PubMed12614604 )

     大腸菌における自然突然変異の発生に対する転写の影響を調べた。その結果、転写レベルに応じて発生頻度が上昇するタイプのホットスポット型点突然変異が存在することを見いだした。大部分の非ホットスポット型点突然変異の発生には転写レベルは大きな影響を示さないことも分かった。転写依存性のホットスポットは複製フォークの進行方向にも影響を受け、ミスマッチ修復に抵抗性の配列置換型変異であることを明らかにした。これらの結果から、転写依存性の突然変異の発生機構のモデルを提唱した。

  • Maki, H. (2002). Origins of spontaneous mutations: Specificity and directionality of base-substitution, frameshift, and sequence-substitution mutageneses. Annu. Rev. Genet. 36, 279-303.(PubMed12429694)

     自然突然変異の起源について、特に点突然変異の発生の分子機構を中心にしてこれまでの知見を概観し、この数年間に新たに提唱されたモデルを検証するとともに、今後解明されるべき問題点を整理した。

  • Egashira, A., Yamauchi, K., Yoshiyama, K., Kawate, H., Katsuki, M., Sekiguchi, M., Sugimachi, K., Maki, H., and Tsuzuki, T. (2002).Mutational specificity of mice defective in the MTH1 and/or the MSH2 genes. DNA Repair 1, 881-893. (PubMed12531017)

     酸素ラジカルにより細胞内で発生する8-oxodGTPを特異的に加水分解するMTH1タンパク質をコードするMTH1遺伝子を欠損したノックアウトマウスで発生する自然突然変異を詳細に解析した。その結果、大腸菌mutT変異株とは異なり、MTH1欠損は顕著なミューテーター活性は示さないことが判明した。哺乳動物ではMTH1遺伝子以外にも8-oxodGTPによる変異誘発を抑制する複数の機能が存在する可能性が示唆された。

  • Yoshiyama, K., Higuchi, K., Matsumura, T., and Maki, H. (2001). Directionality of DNA replication fork movement strongly affects the generation of spontaneous mutations in Escherichia coli.J. Mol. Biol.307, 1195-1206. (PubMed21189409)
  • Kamiya, H., Maki, H., and Kasai, H. (2000). Two DNA polymerases ofEscherichia coli display distinct misinsertion specificities for 2-hydroxy-dATP during DNA synthesis. Biochemistry39, 9508-9513. (PubMed10924147)
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