Research & Development

季節を感知して花を咲かせる仕組みを理解し、利用する

植物は体内時計を利用して季節を感知し花を咲かせます。しかし、野外で実際にどうなっているか?についてはあまりわかっていません。また、体内時計を利用すれば私たちは「花咲かじいさん」になれるのでしょうか?

研究の背景

植物がどうやって適切な季節に花を咲かせているかについての 研究は古くからおこなわれてきました。その結果、花を咲かせるのに必要な遺伝子はかなりの数が明らかになり、その仕組みについても環境条件を調節した実験室での研究からかなり理解されてきました。

その鍵となっているのがFT遺伝子(えふてぃーいでんし)です。FTは花咲かホルモンとして知られるフロリゲンというタンパク質をつくる遺伝子です。FTがあれば花は咲きます。実験室ではFTは夕方に一回だけ発現します。そのため、私たちはこれまで夕方のFTがどうやって調節されているのかを理解しようと頑張ってきました。

しかし最近になって、実験室では環境条件をあまりにも単純化しすぎていたらしいことがわかってきました。例えば、実験室条件では温度は一定に保ちますが、野外では昼は暖かく夜は冷たいというように温度は変動します。また、ある波長の光も実験室条件ではすごく少ないことがわかっています。そこで、実際に野外でFTの発現を調べてみると、驚くことにFTは朝と夕の2回発現していました。つまり、私たちはこれまでの間、夕方のFTばかりに注目してきて朝のFTがどうやって、何のために発現しているのかについて全く理解できていなかったのです。私たちは、より現実に近い条件で、いろいろな実験をやり直し、もういちど花が咲く仕組みを理解しなおさなければなりません。

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季節変化に応じて花が咲く仕組みの理解と制御の4ステップ。1. まずは遺伝子を見つけます。 2. 遺伝子が見つかるとそれらの関係が気になります。3. 関係がわかると動かしたくなります。4. もっと思い通りに動かすために設計したくなります。

花が咲く仕組みが理解できると、好きなタイミングで花をさかせるようになるかもしれません。まさに現代版の「花咲かじいさん」です。これは桃栗三年柿八年と言われるように花が咲くまでに長い時間を必要とする植物に早く花を咲かせるのに使えるかもしれませんし、母の日のカーネーションやお盆の菊のように一年のうち特定の時期に需要が集中する切り花の生産にも役立つかもしれません。また、キャベツやホウレン草といった葉っぱを食べる野菜では、花を咲かせないことの方が重要です(花咲かせないじいさん!)が、こういったことも可能になるでしょう。

花を咲かせたり、花をさかせなかったりするには遺伝子組み換えやゲノム編集が有効な手段です。しかし、一般消費者受けはしないため応用まで見据えた場合、現実的ではないかもしれません。私たちは化合物やその他の方法で体内時計を調節し、植物に季節を勘違いさせてやることができれば、好きなタイミングで花を咲かせたり咲かせなかったりできると考えています。

やっている研究を簡単に

1.野外ではなぜ朝にFT遺伝子が発現するの?

野外ではFT遺伝子が朝にも発現しています。その仕組みやその生物学的な意味はまだわかっていません。鍵となっているのはphyAとよばれる、光を受け取る分子です。phyAを中心にどうやって植物が朝のFT遺伝子発現を調節しているのかを理解しようとしています。

2.植物は体内時計を使ってどうやって季節を認識しているの?

光を受け取る分子が無くなれば植物は暗闇だと感じます。では、体内時計を働かなくして季節がわからなくなった植物はいつの季節だと感じるのでしょうか?これまであまり考えられてこなかった視点から、植物の季節認識に迫ります。

3.花咲かじいさんを目指して

科学的な安全性とは別の基準により、遺伝子組換えは消費者受けしません。また、品種改良は時間がかかりますし、植物工場は大掛かりすぎます。もっと手軽に花を咲かせたり咲かせなかったりできるようになることを目指し、振りかければ花が咲く(咲かない)化合物の発見に取り組んでいます。