研究内容

微生物は地球上のほとんどあらゆる環境に生息し、物質循環の仲介者となって地球環境の恒常性維持に貢献しています。また、発酵食品、医薬品、化成品などの製造においても活躍し、私たちの暮らしと密接にかかわってきました。これら多種多様な微生物機能はその代謝能力にひとつの答えを求めることができます。たとえば当研究室では自然界では生分解されないと考えられていたプラスチックを分解・代謝する細菌(*)を研究していますが、これまでに明らかになった代謝機構はたいへんユニークなものでした。なぜ、微生物はこのような特殊な能力を持ち、また持つにいたるのでしょうか?このような大きな疑問に対し、様々なスケールの生体部品の機能を明らかにすることで、小さな答えを提出していきたいと考えています。

Keywords

微生物学、酵素化学、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、代謝工学、イメージング、微生物育種、進化、微生物スクリーニング

*A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate). Yoshida, S., Hiraga, K., Takehana, T., Taniguchi, I., Yamaji, H., Maeda, Y., Toyohara, K., Miyamoto, K., Kimura, Y., Oda, K., Science 351 (2016), 1196?1199.

【論文要約】ポリエチレンテレフタレート(PET)はペットボトルや衣類などの用途のため製造され、ほとんどの場合、短期間の使用ののち廃棄されている。その多くは環境へ流出するが、生物による分解をうけず蓄積する一方であると考えられてきた。筆者らは、PETの屑の混入した環境試料を採取し、結晶度の低いPETフィルムをおもな炭素源とする条件で集積培養を施した。その結果、PETフィルムを分解し資化する細菌の分離に成功し、Ideonella sakaiensis 201-F6株と名づけた。この細菌のゲノム情報を基盤としてPETを分解する酵素を探索したところ、PETからモノヒドロキシエチルテレフタレートをおもに遊離する活性をもつ酵素が同定された。さらに、遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレートをテレフタル酸とエチレングリコールとに加水分解する活性をもつ酵素も同定された。この2つの酵素により、PETはすでに代謝経路の報告されているテレフタル酸とエチレングリコールまで効率的に分解されることが明らかとなった。

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PETを分解・代謝する最近の写真
PETを分解・代謝する細菌I. sakaiensis
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