NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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視神経が固有のシナプス層をどのように認識するのか?

演題 視神経が固有のシナプス層をどのように認識するのか?
講演者 鈴木 崇之 博士(Max Planck Institute of Neurobiology)
使用言語 日本語
日時 2011年4月22日(金曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容
脳神経組織において相同の機能をもつニューロンは決まった層においてシナプスを形成し,それが集まって何重もの層状の構造を形成することが多い.ショウジョウバエのR7視細胞とR8視細胞は空間の同一な点からの異なった波長の光を感知し,脳(視覚中枢)の異なったシナプス層に軸索を伸ばしつなぎとめている.ニューロンの軸索がどのように固有のシナプス層を認識し選択をするのか,その分子機構はよくわかっていない.私たちは,視神経の軸索の投射を制御する2つの細胞表面タンパク質,GogoとFmiがR8視細胞の軸索において機能的に相互作用することを見い出した.Gogo単独のはたらきによりR8視細胞の軸索を一過的にM1層にとどめ,そののち,GogoとFmiとが協調してR8視細胞の軸索を最終的な標的であるM3層へと導いていた.構造機能解析の結果,GogoはFmiと協調する際に細胞内シグナルを伝達する役割を担っていることが示唆された.このシグナルにはGogoの細胞内ドメインの2つのチロシンが脱リン酸化される事が重要である事が分かった。さらに,R8視細胞の軸索の投射においてFmiは脳の一部のニューロンで必要とされていることがわかり,このことは,R8視細胞のFmiと脳の標的細胞のFmiとがホモ接触結合することによりR8視細胞のM3層への投射の起こることを示唆していた.
以上の結果から,Gogoは神経軸索の投射においてFmiの機能的なパートナーであり,これら2つのタンパク質の相互作用をダイナミックに制御することにより視神経の軸索のシナプス層の特異的な選択が正確に行われていることが示唆された.この分子機構がシナプス層の特異的なターゲッティングにおいて、どのような普遍的な意味を持つのか、他のデータも交えながら議論したい。
問合せ先 分子発生生物学
高橋 淑子 (yotayota@bs.naist.jp)

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