NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

DA-Raf によるRas-MAPK経路阻害機構とその生理的役割

演題 DA-Raf によるRas-MAPK経路阻害機構とその生理的役割
講演者 高野 和儀 先生
千葉大学大学院融合科学研究科
使用言語 日本語
日時 2016年3月25日(金曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容 細胞は周囲の環境からの情報に応答して,細胞増殖や細胞分化などの多様な生理機能を発揮するための機構を備えている。とりわけRas-MAPK経路は古くから知られているシグナル伝達経路であり,増殖因子により活性化する。活性化したRasは下流のRaf-MEK-ERKカスケードを活性化し,様々な細胞応答を引き起こす。活性化したRasはRafを細胞膜上で活性化させることが知られているが,どのようにRafの活性化が制御されているかは不明であった。一方,私達が同定したDA-RafはRafファミリータンパク質A-Rafのスプライシングアイソフォームであり,Ras結合ドメイン (RBD) を有するが,下流にシグナルを伝えるためのkinase ドメインを欠いている。このため,DA-Rafが内在的にRas-MAPK経路を阻害すると考えられ,DA-Rafの生理的機能とその分子機構を探ることにより,Ras-Raf結合の制御機構が解明できると考えられた。そこで,まずはDA-Rafの生理機能について検討した。DA-RafはC2C12細胞における筋細胞分化, TGF-によるRLE-6TN細胞の上皮-間充織転換および,DA-Raf特異的ノックアウトマウスの解析から肺胞隔壁の形成に関わっていることが明らかになった。しかしながら,DA-Rafノックアウトマウスで認められた肺胞隔壁の形成不全はII型肺胞上皮細胞においてRas-MAPK経路が撹乱されたためであることを解明したものの,II型肺胞上皮細胞にはDA-Rafだけでなく他のRafファミリータンパク質も濃縮していた。このことは,DA-Rafが他のRafファミリータンパク質よりもRasに結合しやすい,あるいはRasとの結合の優先性を決める分子機構の存在を示唆している。本セミナーでは,私達がこれまで明らかにしたDA-Rafの生理機能の詳細を紹介するとともに,DA-RafによるRas-MAPK経路の阻害機構およびRas-Raf結合の制御機構について議論したい。
問合せ先 分子医学細胞生物学
末次 志郎 (suetsugu@bs.naist.jp)

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