NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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減数分裂期染色体上のイベントの進行は染色体軸に局在するタンパク質群の構成でマークされる

演題 減数分裂期染色体上のイベントの進行は染色体軸に局在するタンパク質群の構成でマークされる
講演者 福田 智行 博士(カロリンスカ研究所)
使用言語 日本語
日時 2013年1月10日(木曜日) 13:30~14:30
場所 L13会議室
内容
減数分裂は精子や卵を形成するための特別な細胞分裂である。減数分裂時に染色体を正確に分配するためには、それに先立って全ての相同染色体対が対合し、組換えが生じなければならない。減数分裂期の染色体は、染色体軸とクロマチンのループからなる特殊な構造を形成し、この構造のもとで対合や組換えを行う。我々は哺乳類の染色体軸の新規構成因子として、HORMAD1タンパク質を同定した。HORMAD1は独自の空間的制御を受けており、まず、染色体の軸構造が形成されるとHORMAD1は染色体軸の全長に渡って局在する。次に、相同染色体が対合し始めると対合の完了した領域から消失してゆき、未対合領域にのみ残存する。対合の終了後、各相同染色体が脱対合し始めると脱対合領域に再局在してゆき、やがて染色体構造の解消とともに消失する。我々は更に、HORMAD1がATM/ATRキナーゼのコンセンサス配列上でリン酸化されることを見出した。リン酸化特異的抗体を用いて免疫染色を行ったところ、未対合領域にのみ特異的にシグナルが検出され、対合領域や、脱対合している領域では検出されなかった。以上の解析から、相同染色体の対合状態がHORMAD1とそのリン酸化の有無の組み合わせによってマークされることが明らかになった。興味深いことに、HORMAD1のリン酸化が減少するノックアウトマウスでは、未対合領域に存在すべきタンパク質の局在に異常が見られた。したがって、HORMAD1のリン酸化が未対合のシグナルとなり、対合や組換えの制御に関わる因子の染色体軸へのリクルートを促進することが示唆された。
Fukuda et al., PLoS Genet. 8, e1002485 (2012)
問合せ先 分化・形態形成学
横田 明穂 (yokota@bs.naist.jp)

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