NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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中心体を持たない植物が紡錘体を形作れるのはなぜか?

演題 中心体を持たない植物が紡錘体を形作れるのはなぜか?
講演者 堀田 崇 博士(大阪大学大学院生命機能研究科 細胞核ダイナミクス研究室 特任研究員)
使用言語 日本語
日時 2012年9月18日(火曜日) 13:30~14:30
場所 大セミナー室
内容
動物細胞における中心体は微小管形成の文字通り中心的存在である。間期の微小管形成のみならず分裂期において紡錘体の二つの極として紡錘体微小管の形成に重要な役割を果たす。高等植物が中心体を持たないことは古くから知られてきたが、植物がどのようにして中心体なしで紡錘体を形成し細胞分裂を完遂するかは依然不明のままである。私は大学院在学時より一貫してこの「中心体を持たない植物の微小管形成の仕組み」に魅せられて研究を続けてきた。今回のセミナーでは私がカリフォルニア大学デービス校で行った4年半にわたる植物の紡錘体形成に関する研究を紹介する。動植物を問わず微小管の重合開始点で働くのがγチューブリン複合体であるが、近年ハエやヒトで新たに見出されたタンパク質複合体オーグミンは、このγチューブリン複合体を紡錘体内の微小管上に局在させることでそこから新たな微小管の重合を促すと考えられている。私たちはシロイヌナズナにおいてヒトのオーグミンサブユニットHAUS3のオルソログAUG3を見出し、複合体を精製したのち質量分析法によって8つのサブユニットAUG1-8を同定することに成功した(Ho et al. 2011, Hotta et al. 2012)。興味深いことにこれらのうちAUG7,8の2つは植物に独自のサブユニットであった。aug7変異体では分裂期の微小管構築が乱れ紡錘体が正常に作られない結果、植物体が極めて矮小化することが明らかとなった。これらのことから中心体を持たない植物においてはオーグミンが関与する微小管構築機構が紡錘体形成における必須のプロセスであり、適切な細胞分裂と形態形成を支えていると考えられる(Hotta et al. 2012)。今後はオーグミンが実際にどのように微小管形成に関与するか明らかにするためにin vitro解析系を確立し顕微鏡下で詳細な観察を行いたい。

Ho et al. (2011) Plant Cell. 23: 2606-2618
Hotta et al. (2012) Plant Cell. 24: 1494-1509
問合せ先 植物細胞機能
橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp)

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