NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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新規阻害剤コブトリンにより明らかになったセルロース微繊維とペクチンの相互作用

演題 新規阻害剤コブトリンにより明らかになったセルロース微繊維とペクチンの相互作用
講演者 米田 新 博士(理化学研究所バイオマス工学研究プログラム)
使用言語 日本語
日時 2011年8月31日(水曜日) 15:30~16:30
場所 大セミナー室
内容
高等植物細胞は、細胞膜直下の表層微小管と、それにより配向が制御されている細胞壁内のセルロース微繊維により、その形が作られ維持されていると考えられている。しかし、表層微小管によるセルロース微繊維沈着方向の制御機構については、いまだ不明な点が多い。一方ペクチンは細胞壁マトリクス中に多く存在する複合多糖で、細胞壁の主要な構成要素の1つであるが、その役割については不明な点が多い。私はこれまでに、ケミカルジェネティクスの手法により、表層微小管とセルロース微繊維の平行性を乱す新規阻害剤コブトリンを単離した。このコブトリンの標的因子を明らかにすることは、表層微小管とセルロース微繊維の平行性を制御する機構を解明する重要な足がかりになると期待される。そこで、コブトリンに対する感受性を変化させる変異体のスクリーニングを行った。その結果、ペクチン修飾・代謝酵素の過剰発現により、コブトリンに対する感受性が変化することが明らかになった。また、コブトリン処理により、ペクチンの局在が乱され、細胞表面に一様に広がってしまう様子が観察された。これらの結果は、コブトリンがペクチンに対し影響を及ぼしていることを示唆している。さらにこのことから、ペクチンがセルロース微繊維の配向を形成ないし維持するのに重要な役割を果たしていることが推察される。今後コブトリンの直接的な作用機序を明らかにすることで、植物細胞壁多糖同士の相互作用やその役割が明らかになると期待している。現在コブトリンの標的因子の探索を進めており、それらの結果も含めて発表し考察する。
問合せ先 分化・形態形成学
横田 明穂 (yokota@bs.naist.jp)

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