NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

武田征士特任助教が、財団法人住友財団から2008年度基礎科学研究助成の対象者に選ばれました

グローバルCOE形態統御機構研究グループの武田征士特任助教が、財団法人住友財団から2008年度基礎科学研究助成の対象者に選ばれました。この助成は、重要な基礎科学研究、とりわけ新しい発想が期待される若手研究者による萌芽的な研究に対して支援が行われるものです。今年度は、1,289件という多数の応募がありました。

助成受託のコメント

武田 征士 特任助教グローバルCOEの特別研究グループとして、新しく発足した形態統御機構研究グループに赴任してから、植物の葉や花などがどうやって形成されるのかを、遺伝子と細胞のレベルで解明する研究を行ってきました。この研究課題に対して本助成をいただくことができ、大変光栄に、またうれしく思っています。今後より一層、気を引き締めて、植物の器官形成メカニズムを明らかにする研究を進めて行きたいと考えています。

助成受託研究テーマ

「植物の器官と器官境界部形成メカニズムの細胞レベルでの解析」

生物は、様々な器官を作りながら成長していきます。器官の形成は、細胞の分裂と伸長の時間的・空間的な制御によって行われます。植物細胞は細胞壁に囲まれていて自由に動けないため、時間的・空間的な細胞成長の制御が特に重要だと考えられますが、その分子メカニズムはほとんど明らかにされていません。

双子葉植物の胚では、細胞成長の促進によって子葉が形作られ、同時に2枚の子葉を隔てる境界部分では細胞成長が抑制されます(図1)。境界部で働くCUP SHAPED CYTYLEDON (CUC)遺伝子が機能を失ったシロイヌナズナのcuc突然変異体では、境界部での細胞成長が抑制されず、その結果、子葉どうしが融合したカップ状の芽生えを作ってしまいます(図2)。また、cuc変異体では、子葉だけでなく花柄と茎、がく片とがく片、おしべとめしべの融合などが見られ、CUC遺伝子が植物の一生を通して器官を分ける重要な役割をもつことが知られています。CUCは転写因子をコードしており、他の遺伝子発現をコントロールすることによって境界部の形成に関わることが示されていますが、細胞の成長そのものにどう関与しているのかはまだ分かっていません。

本研究では、このCUC遺伝子に焦点を当て、器官と境界部ができていく際の細胞動態や、CUC遺伝子がどうやって境界部の時間・空間的な細胞成長を制御しているのかを調べることで、植物の細胞成長のダイナミクスと器官形成との関係を明らかにすることを目的としています。

関連する論文
  1. Aida M & Tasaka M, Curr Opin Plant Biol 9, 72-77, 2006.
  2. Aida, M. & Tasaka, M, Plant Mol Biol 60, 915-928, 2006.
  3. Hibara K et al, Plant Cell 18, 2946-2957, 2006.
  4. Aida M et al, Cell 119, 109-120, 2004.
  5. Taoka K et al, Plant J 40, 462-473, 2004.
  6. Ishida T et al, Plant Cell Physiol 41, 60-67, 2000.
  7. Aida M et al, Development 126, 1563-1570, 1999.
  8. Aida M et al, Plant Cell 9, 841-857, 1997.

(2008年10月21日掲載)

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