NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

中畑泰和助教が医科学応用研究財団の研究助成対象者に選ばれました

遺伝子発現制御学講座の中畑泰和助教が鈴木謙三記念 財団法人 医科学応用研究財団 「平成22年度調査研究助成」の対象者に選ばれました。本助成は、疾病の予防、診断、治療における医学、薬学、医工学及び関連諸科学の医療への応用に関する調査研究に対して助成金を交付し、国民保健に関する科学の進歩及び国民の福祉の向上に貢献しようとするものです

鈴木謙三記念 財団法人 医科学応用研究財団のホームページ

助成受託のコメント

中畑泰和助教 この度、財団法人医科学応用研究財団からの研究助成金を頂くことになり、大変感謝いたします。この助成金を有効に活用し、さらなる研究の発展を目指したいと思います。

助成受託研究テーマ

概日時計の破綻による肥満などの生活習慣病発症メカニズムの解明

近年の分子生物学・遺伝学的研究より、概日時計はただ睡眠・覚醒リズムを支配するだけの機構ではなく、関連した複数の生理機能が最も効率的に働くために酵素活性などを同調させる機構であることが明らかになりつつある。また、概日時計の破綻は代謝性疾患や早老など種々の老化関連疾患を引き起こすことも知られている。そこで、「概日時計機構」=「生体のシステム全体を統合する機構」と考え、概日時計機構の観点から代謝性疾患の分子メカニズムの解明に挑戦し、生活習慣病発症メカニズムを理解し、さらには生活習慣病の予防・治療薬の開発を目的としている。

近年私は、概日時計遺伝子発現制御に老化・代謝制御に関わる非常に重要な分子NAD+依存性脱アセチル化酵素“SIRT1”が関与していることを明らかにした。さらに細胞内NAD+産生が概日時計により制御されていること、そして細胞内NAD+がSIRT1活性を制御し、概日時計遺伝子の発現を制御していることも解明した。これら一連の発見は、従来の転写制御によるフィードバックループに加え、それとカップルした代謝レベルでのフィードバックループの存在を初めて明らかにした。

代謝レベルでのフィードバックループが転写レベルでのフィードバックループと同様に非常に複雑かつ緻密に概日時計を制御しているとの作業仮説のもと、本研究課題は、NAD+および他の代謝物が関与する代謝経路(フィードバックループ)と概日時計の相互制御メカニズムの解明、さらにその制御破綻が引き起こす生活習慣病発症メカニズムの解明を目標としている。

【図】 転写および代謝レベルでの概日時計制御のモデル図
転写および代謝レベルでの概日時計制御のモデル図

関連する論文
  1. Nakahata Y, Sahar S, Astarita G, Kaluzova M, Sassone-Corsi P. Circadian control of the NAD+ salvage pathway by CLOK-SIRT1. Science. 2009 324(5927):654-657
  2. Nakahata Y*, Kaluzova M*, Grimaldi B, Sahar S, Hirayama J, Chen D, Guarente LP, Sassone-Corsi P. The NAD+-dependent deacetylase SIRT1 modulates CLOCK-mediated chromatin remodeling and circadian control. Cell. 2008 134(2):329-340. *Equally contributed to this study

(2010年11月11日掲載)

研究成果一覧へ


Share:
  • X(twitter)
  • facebook