NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

細胞内のpHを調節するタンパク質の構造的基盤

細胞の中は、細胞膜に存在するイオンチャネルであるNa+/H+交換輸送体、NHE、によって、通常は中性に保たれている。NHEは、あらゆる組織に普遍的に存在し、Na+イオンの濃度勾配をエネルギーとして、H+イオンを排出することで細胞内pHの調節を行う。奇妙なことに、全ての癌細胞は正常な細胞と異なり、高いpHをもつことが分っている。NHEの活性を抑える薬剤を開発できれば、全ての癌細胞に共通に効く抗癌剤になるかも知れない。NHEの活性を制御するタンパク質には様々なものが知られているが、ここでは、NHEを細胞骨格に固定してその活性を維持するNHERFとERM蛋白質(図1)に注目して、両者の相互作用の詳細を調べた。その結果、ERM蛋白質(図2、青)がNHERF(図2、赤)のC-末端の一部の配列を読み取ることによって特異的に結合することが明らかとなった。読み取られる配列がわかったので、阻害ペプチドなどの設計が可能となった。

掲載論文

Terawaki, S., Maesaki, R. and Hakoshima, T. (2006) Structural Basis for NHERF Recognition by ERM Proteins. Structure 14, 777-789.

(2006年06月30日掲載)

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