NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

北野健助教が上原記念生命科学財団から研究奨励金を受けました

構造生物学講座の北野健助教が、上原記念生命科学財団から研究奨励金を受けました。本奨励金は、生命科学研究に意欲的に従事する日本在住の若手研究者に授与されるものです。

上原記念生命科学財団のホームページ

助成受託のコメント

この度は上原記念生命科学財団 研究奨励金の助成を賜りまして、誠に光栄に思います。ウェルナー早老症は患者のほとんどが日本人という遺伝病であるにも関わらず、現在我が国においてその研究は決して満足に行われているとは言えません。本研究の重要性を評価頂けたことを心より嬉しく思います。原因タンパク質が巨大かつ不安定なことから研究には困難が予想されますが、助成頂いたのを励みに早老症発症メカニズムの解明に尽力したいと思います。

助成受託研究テーマ

「ウェルナー早老症タンパク質の構造研究」

ウェルナー症候群は若い年齢で老化が急速に進行する早老症のひとつで、ウェルナータンパク質(WRN)の機能欠損によって引き起こされます。WRNはゲノムDNAの安定性維持を通して、細胞の抗老化および抗ガン化に重要な役割を果たしています。WRNは1432アミノ酸からなる巨大なマルチドメインタンパク質で、N末端のエキソヌクレアーゼドメイン、中央のヘリカーゼドメインに加えて、C末端にウィングドへリックスドメインおよびHRDC(helicase-and-ribonuclease D-C-terminal)ドメインとよばれる特徴的な領域を有しています。最近これら二つのC末ドメインが細胞の抗老化作用に深く寄与していることが明らかとなってきましたが、その構造と機能は良く分かっていません。本研究ではWRNの立体構造解析を進め、二つのドメインがゲノムDNAや他のタンパク質群と如何にして相互作用ネットワークを形成し、細胞のアンチエイジングを実現しているのかを明らかにしていきます。


図の説明
上:WRNのドメイン構造と、相互作用する様々なタンパク質群。
下:本学で構造解析に成功したヒトWRN HRDCドメインの立体構造。2007年1月、米国の専門誌J. Biol. Chem.の表紙を飾りました。

関連する論文
  1. Kitano, K., Yoshihara, N., Hakoshima, T. (2007).
    Crystal structure of the HRDC domain of human Werner syndrome protein, WRN.
    J. Biol. Chem., 282, 2717-2728.
  2. Sakurai, S.*, Kitano, K.*, Yamaguchi, H., Hamada, K., Okada, K., Fukuda, K., Uchida, M., Ohtsuka, E., Morioka, H., Hakoshima, T. (2005).
    Structural basis for recruitment of human flap endonuclease 1 to PCNA.
    EMBO J., 24, 683-693.
    (*Both authors equally contributed)
  3. 北野 健, 箱嶋敏雄 (2006).
    ヒトFEN1-PCNA複合体の結晶構造が示すスイング活性化機構.
    日本結晶学会誌, 48, 367-372.

(2007年07月01日掲載)

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