NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

古郡麻子博士が日本遺伝学会第79回大会 Best Papers賞を受賞しました

2007年9月19日~21日に岡山で開催された「日本遺伝学会 第79回大会」において、原核生物分子遺伝学講座の古郡 麻子博士(ポスドク)が「Best Papers賞」を受賞しました。受賞の対象となった発表は「大腸菌in vitro DNA複製系を用いたDNAポリメラーゼスイッチの解析:Pol IVによるPol III制御機構」です。本発表は、DNA損傷修復機構のひとつである、損傷乗り越えDNA合成に働く大腸菌DNAポリメラーゼIV(Pol IV)の新たな活性を明らかにしたもので、その成果が評価されこの受賞に至りました。

日本遺伝学会のHP

受賞コメント

この度は、「日本遺伝学会第79回大会 Best Papers賞」を受賞できて大変うれしく思っています。この受賞の対象となった研究は、真木寿治教授のご指導のもと九州大学の片山勉先生、University of Southern CaliforniaのMyron F. Goodman先生との共同研究により行われたものですが、その他にも研究室の皆様をはじめ多くの方々に支えられてきたものだと思い、心から感謝しています。真木教授と共にのびのびと楽しく研究してきた結果がこのように評価されたことは私にとって大きな喜びです。この受賞を励みとして、ユニークで新しい発見につながる研究を続けていきたいと思います。

受賞内容

ゲノム全体を正確に複製するためには複製忠実度(fidelity)の高い複製型DNAポリメラーゼが必要ですが、複製型ポリメラーゼは鋳型DNA鎖上にUVや薬剤などによる損傷を受けた塩基があるとDNA合成を停止してしまいます。近年、損傷があってもDNA合成することができる、損傷乗り越えDNA合成(translesion synthesis;TLS)型ポリメラーゼと呼ばれるfidelityの低い一群のDNAポリメラーゼの存在が報告されました。私たちは、このように性質の異なる複数のDNAポリメラーゼが細胞内でどのように協調的に働いているのかに興味を持ち研究を進めています。

今回の研究発表では、停止した複製型からTLS型へポリメラーゼが交代するポリメラーゼスイッチ反応(図1)を、大腸菌の複製型ポリメラーゼであるPol IIIとTLS型ポリメラーゼであるPol IVを用いてin vitroで再構成し、その詳細を生化学的に解析した結果を報告しました。私たちの研究から、Pol IIIからPol IVへのスイッチが極めて短時間で起こること(図2)、Pol IVにはPol IIIを追い出してプライマーを奪い取るための能動的なスイッチ活性を持っていることを示唆する結果が得られました。今後はPol IVの働きについて、更に詳細な分子メカニズムを明らかにしたいと考えています。

(2007年12月21日掲載)

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