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研究テーマ

植物の組織はなぜ美しいのか

植物の根や葉の切り口には美しい組織パターンが現れます。このようなパターンは、もちろん誰かに見せるために作られているわけではありません。それでは、植物はなぜこのような美しい細胞パターンを作るのでしょうか? そして、それを研究することにどのような意味があるのでしょうか?

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図の左は葉の断面です。葉は光合成によって二酸化炭酸を固定しますが、光合成を効率良く行うためには、光エネルギーを捕集する葉肉細胞だけでなく、水や同化産物を流す維管束細胞やガス交換をおこなう気孔細胞が葉の中に正しく配置されなければなりません。また、図の右は根の輪切りです。根では同心円状の細胞パターンが特徴的に発達します。表皮から吸収された水や栄養分は、代謝変換や選別を受けながら根の中心部の維管束に到達し、そこから地上部に運ばれます。葉でも根でも、機能分化した細胞が適切な場所に配置されることが、植物器官の生理機能に重要な意味を持っていることがわかります。植物の器官がその能力を最大限に発揮できるように進化してきた結果が、このような美しい組織パターンになって表れているのです。

このように分化した細胞が正しく配置され、機能的な器官や個体が作られる過程を発生生物学では「パターン形成 (pattern formation または patterning)」と呼びます。植物も昆虫もヒトも、パターン形成なくして個体を作ることはできません。パターン形成は生き物のからだの成り立ち考える上で最も重要な概念と言えます。

生物種ごとに体の大きさや形が異なっているのを見ても分かるように、パターン形成のプログラムはゲノムに書き込まれているはずです。しかしゲノム情報がどのようにして生物の形へと変換されるのか、これはゲノムを解読しただけでは全く分かりません。また植物の形は生長相や環境条件によって変化するので、そのたびにパターンの作り換えが必要になります。このように、パターン形成は植物の生産力や生存戦略を支える基本メカニズムでもあります。パターン形成を研究することは、単に植物の体づくりを学術的に解明するだけでなく、植物を食糧やエネルギー源として利活用するためにも重要なのです。