NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

藤本 晶子 さん

  • エーザイ株式会社創薬技術研究所
  • 2000年度(博士) 生体高分子構造学
藤本 晶子さんの近況写真

私は現在、日本の製薬会社であるエーザイ株式会社の社員として、蛋白質の立体構造情報に基づいた薬剤の論理的な設計をテーマとした研究を行っています。皆さんは何故薬を飲むと病気の症状が抑えられるかをご存知ですか?薬というのはそのほとんどが低分子有機化合物であり、生体内に入ると特異的にある生体分子(病気に関与する蛋白質)に結合して活性を調節します。その結果、病気の症状が抑えられ、時には何の副作用もなく病気が治るのです。一昔前までは、手当たり次第に色んな構造を持つ低分子化合物を合成して、その中でたまたま疾患に効くものを見つけ出してくることが創薬研究の主流でした。しかしそれには膨大な労力と費用がかかります。そこで近年では論理的に薬剤を設計する試みが広く行われるようになっています。この研究の基盤の一つとなっているのが蛋白質の立体構造です。薬剤の標的となる蛋白質の立体構造が明らかになれば、それに特異的に結合する化合物の構造がデザイン出来るようになり、短期間でよりよい薬剤の創出につながる可能性があります。蛋白質の構造を知る方法はいくつかありますが、この場合最も適した手法がX線結晶構造解析であり、会社で私が担当している技術になります。

私は奈良先端科学技術大学院大学の生体高分子構造学講座に修士・博士課程の計5年間在籍し、箱嶋敏雄教授の下で蛋白質のX線結晶構造解析を学びました。基本的な技術はもちろんのこと、研究者としての物の考え方や他の研究者との協調の仕方など、本当に多くのことを学びました。特に奈良先端大は私も含めて異分野からやって来た学生が多かったため、自分とは全く異なる思考に触れて驚いたり感心したり、良い意味で刺激の連続でした。当時の知識や経験が、今の研究生活の基盤になっていると思います。薬剤の論理設計はまだ確立された手法でないため思考錯誤の連続ですが、未知な事柄を探求することはエキサイティングであり、奈良先端大にいた頃と同じ気持ちで今も日々研究に邁進しています。これから大学院で研究を始められる方も多いとは思いますが、今後の研究生活を悔いのない形で送って頂き、そこで得られる経験を是非将来につなげていって欲しいと思います。これからも若い奈良先端大の卒業生に色んな場で会えますことを楽しみにしています。

【2006年11月掲載】

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