研究室・教員

応用免疫学 (新藏研究室)

新藏教授の顔写真
教授
新藏 礼子
助教
中西 慶子
Email
{ rshinkura, knakanishi } @bs.naist.jp
研究室HP
http://bsw3.naist.jp/shinkura/

研究・教育の概要

私たちの身体を病原体や毒素から守る免疫システムは大きく自然免疫と獲得免疫に分けられます。私たちは獲得免疫系のなかでも特にBリンパ球が産生する抗体に注目して研究を進めています。抗原刺激を受けたBリンパ球は活性化されるとactivation-induced cytidine deaminase (AID)という酵素を発現し、抗体遺伝子を多様化し高親和性抗体を産生する体細胞突然変異を誘導します。抗体の抗原結合力を変化させる体細胞突然変異とともに、抗体の攻撃力を変えるクラススイッチ現象は感染防御に重要な役割を担っています。体細胞突然変異もクラススイッチもAIDが必要で、AIDによるDNA切断が引き金となって抗体遺伝子に変異が導入されます。本来生物に備わっているDNA修復機構を抑え、AIDが関わるとなぜ抗体遺伝子に高率に変異が入るのか、その分子機構はまだはっきりわかっていません。DNA変異はゲノム安定性に対する大きな危険要素となり、これがうまくコントロールされないと細胞のがん化を引き起こします。私たちは体細胞突然変異とクラススイッチのうち体細胞突然変異だけが特異的に障害されるAID変異体を見つけ、これを手掛かりに体細胞突然変異の分子メカニズムを明らかにします。新しい抗体を作るメカニズムを探りながら、基礎研究の成果を病気の治療に役立てることを目指します。

主な研究テーマ

腸管IgA抗体による腸内細菌制御機構の解明

腸内細菌叢の乱れが多くの病気を引き起こしていることが注目されており、腸内細菌叢を改善することが病気の治療や予防に重要です。腸管に分泌されるIgA抗体は腸内細菌を識別して腸内細菌叢を制御しているといわれていますが、その詳細な機構はわかっていません。私たちは腸炎の原因菌だけを抑制する可能性のあるIgA抗体をマウスの腸から分離しました。何百種類の腸内細菌を制御するのに、このモノクローナルIgA抗体は何を認識しなぜその分子を認識すると腸内細菌叢の状態が改善するのかを明らかにします。腸内細菌の乱れを改善する新薬としてIgA抗体を飲む抗体医薬として実現化させます。

体細胞突然変異機構の分子レベルでの解析

AIDのN末変異体(G23S、23番目のグリシンがセリンに変異)はクラススイッチを誘導できるけれども、体細胞突然変異は特異的に大きく障害されることをin vitro実験だけでなくノックインマウスを作成して私たちは確認しました。AIDのN末は体細胞突然変異を誘導するのに必要な補因子の結合部位ではないかという仮説を立て、補因子の探索を進めています。

IgAへ選択的にクラススイッチさせる誘導物質の探索

IgA抗体は粘膜などで分泌され粘膜防御の主役です。一方、IgE抗体が粘膜で産生されると花粉症などのアレルギー反応の原因となります。もし花粉などの抗原刺激を受けたときに粘膜のB細胞をIgEではなくIgAにクラススイッチさせることができれば、アレルギー反応を抑制するだけでなく、同じアレルゲンをIgAがブロックすることができます。IgAへ選択的にクラススイッチを誘導する物質の探索を進め、アレルギーの治療薬候補としたいと考えます。

飲むだけで腸内環境を整え病気を治す、身体に優しい抗体医薬の開発
(図1) 飲むだけで腸内環境を整え病気を治す、身体に優しい抗体医薬の開発
AIDの2面性。新たに強力な抗体を作るが、一方で標的を誤ると細胞のがん化につながる遺伝子変異を産む。
(図2) AIDの2面性。新たに強力な抗体を作るが、一方で標的を誤ると細胞のがん化につながる遺伝子変異を産む。
IgAへの選択的クラススイッチ
(図3) IgAへの選択的クラススイッチ

主な発表論文・著作

  1. Okai S. et al., Nat. Microbiol. 10.1038/nmicrobiol.103, 2016
  2. Wei M. et al., Nat. Immunol, 12, 264-270, 2011
  3. Shivarov V. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 105, 15866-15871, 2008
  4. Shinkura R. et al., Nat. Immunol, 5, 707-712,2004
  5. Shinkura R. et al., Nat. Immunol, 4, 435-441, 2003
  6. Shinkura R. et al., Nat. Genetics, 22, 74-77, 1999