成果報告

論文No.075

シロイヌナズナのTWIN SISTER OF FT、GIGANTEAおよびCONSTANSは青色光に誘導される気孔開口に対して間接的に正に作用する

安藤英伍、大西真人、Yin Wang、松下智直、渡辺藍子、林優紀、藤井美帆、馬建鋒、井上晋一郎、木下俊則
Plant Physiol. 162, 1529-1538 (2013)

Ando, E., Ohnishi, M., Wang, Y., Matsushita, T., Watanabe, A., Hayashi, Y., Fujii, M., Ma, JF., Inoue, S. and Kinoshita, T. (2013) TWIN SISTER OF FT, GIGANTEA, and CONSTANS have a positive but indirect effect on blue light-induced stomatal opening in Arabidopsis thaliana. Plant Physiol. 162: 1529-1538

 植物の表皮に存在する気孔は一対の孔辺細胞からなり、光、特に青色光に応答して開口して植物と大気間とのガス交換を制御しています。以前私達は、日長に応じた花成誘導を調節する花成ホルモン・フロリゲンとして知られているFLOWERING LOCUS TFT)が孔辺細胞でも発現し、間接的に気孔開口を調節することを報告しました(Curr Biol 2011)。花成誘導ではFTと重複して機能するパラログ遺伝子TWIN SISTER OF FTTSF)や、日長の情報を統合し、FTTSFの発現を調節するGIGANTEAGI)とCONSTANSCO)が知られていますが、これらの気孔開口への関与は不明でした。本研究で私達はTSFも孔辺細胞で発現し、青色光による気孔開口に正に作用することを見出しました(図1)。また、GICOや日長に応じた花成誘導の光受容体として知られるクリプトクロムも、孔辺細胞のFTTSFの発現量の調節を通じて気孔開口に間接的に作用することがわかりました。以上の結果は、花成誘導と似た光周性経路によって気孔開口が間接的に調節されており、植物が花を咲かせる時、光周性経路が同時に気孔開口を促進して光合成活性を高め、花芽の形成や種子の成熟に必要なエネルギー供給を促進していると考えられます(図2)。なお本研究は、計画研究代表馬博士との共同研究として行いました。

Fig. 1

図1 TSFを過剰に発現する形質転換植物は、背景植物と比較して気孔が顕著に開口する。バーは10 μmを示す。

Fig. 2

図2 光周性経路による気孔開口調節のモデル図。本研究により、日長に応じた花成誘導と似た経路(光周性経路)が、青色光による気孔開口のシグナル伝達に間接的に作用することが示唆された。FTTSFの下流では何らかの転写因子が関与すると考えられる。灰色の線は概日時計の入出力を示す。