成果報告

論文No.051

発生情報と環境情報による植物の細胞周期制御。

石崎公庸、野々村麻衣子、加藤大貴、大和勝幸、河内孝之
J. Plant Res. in press. DOI 10.1007/s10265-012-0477-7 (2012)

Ishizaki, K., Nonomura, M., Kato, H., T. Yamato, K. T. and Kohchi, T. J. Plant Res. in press. DOI 10.1007/s10265-012-0477-7 (2012)

 オーキシンは植物の発生の様々な局面で機能する重要な植物ホルモンである。しかし、被子植物以外の植物種においてはオーキシン応答が確認されているものの、機能と応答メカニズムはほとんど明らかになっていない。そこで本研究は、植物の形態形成におけるオーキシン機能の原型に関与する知見を得ることを目的とし、単純なオーキシン制御機構を備えている基部陸上植物ゼニゴケにおけるオーキシン応答を解析した。まずゼニゴケ葉状体の成長におけるオーキシンの効果について評価し、オーキシン濃度依存的に成長を阻害する効果を観察した。次に、ゼニゴケ形態形成におけるオーキシン応答場所を可視化する目 的で、ダイズ由来のオーキシン誘導性プロモーターGH3にβグルクロニダーゼ遺伝子(GUS)を連結したコンストラクトを導入した形質転換体を作製した。得られた形質転換体において、ゼニゴケ体内のオーキシン応答をGUS活性として定量化できることを確認した(図1)。さらに無性芽の発生場所である杯状体底部において顕著なオーキシン応答の上昇が見出した(図2)。ゼニゴケの栄養繁殖過程においてオーキシンを介した転写制御が重要な役割を果たしていることが示唆された。

Fig. 1

図1 ゼニゴケProGH3:GUS形質転換体におけるオーキシン応答
(a)GUSレポーターの活性がオーキシン濃度依存的に上昇する。(b)様々な植物ホ ルモンに対する応答。オーキシンに対し特異的なGUS活性の 上昇が確認された。 いずれも無性芽より生育後10日目の葉状体を用いた。n=3

Fig. 2

図2 ゼニゴケProGH3:GUS形質転換体の栄養成長期におけるGUS発現
(a)無性芽より生育10日目の葉状体、顕著なGUS活性は検出されない。(b)14日目 の葉状体。杯状体に顕著なGUS活性が確認された。 (c)組織切片による杯状体断 面図の観察。杯状体の底部(無性芽の発生が始まる場所)において顕著なGUS活 性が確認された。