成果報告

論文No.017

オリザグラベリマが保持する有用農業形質遺伝子座の探査

シム・ロザリン、芦苅基行、高師友紀
Breeding Science 60, 613-619 (2010)

Shim,R.A.,Angeles,E.R., Ashikari,M and Takashi,T. (2010) Development and evaluation of Oryza glaberrima Steud. chromosome segment substitution lines (CSSLs) in the background of O. sativa L. cv. Koshihikari. Breeding Science 60: 613-619

 オリザグラベリマは約3,500年前に、西アフリカにて野生種のオリザバータイから栽培化されたイネである。西アフリカの中でも、オリザグラベリマは主にナイジェリアのリバーデルタの湿潤地帯で栽培化された後、約BC1,000年にギニアの海外近くで第2の栽培化が起こったと考えられている。オリザサティバの1つコシヒカリを遺伝的背景にオリザグラベリマの染色体断片を置換した34系統の染色体置換系統群を作出した。この34系統の染色体置換系統群はオリザグラベリマの染色体をオーバーラップしながら90%以上保持していた。この染色体置換系統群を用いて、収量性、草型、成熟性に関する10形質の有用農業形質の評価を行い、105個の量的形質座を検出した。オリザグラベリマの保持する105個の量的形質座のうち、84個の量的形質座はコシヒカリに対し正の効果を示し、21個の量的形質座はコシヒカリに対し負の効果を示した。84個のQTLのうち、64形質は種子長、種子幅、種子厚、100粒重、穂の種子数、穂における枝こう数等の収量形質を支配するものであった。また、20個の量的形質座は草型に関与するものであった。

Fig. 1

図1 コシヒカリを遺伝的背景にオリザグラベリマの染色体断片を置換した34系統の染色体置換系統群