成果報告

論文No.009

GC-TOF/MS代謝プロファイリングのためのFT-NIRフィンガープリンティング法によるイネFOXシロイヌナズナ株のスクリーニング

鈴木誠、草野都、高橋秀樹、中村由美子、林尚美、小林誠、森昌樹、市川尚斉、松井南、廣近洋彦、斎藤和季
Metabolomics 6, 137-145 (2010)

Suzuki, M., Kusano, M., Takahashi, H., Nakamura, Y., Hayashi, N., Kobayashi, M., Ichikawa, T., Matsui, M., Hirochika, H. and Saito, K. (2010) Rice-Arabidopsis FOX line screening with FT-NIR-based fingerprinting for GC-TOF/MS-based metabolite profiling. Metabolomics 6: 137-145

 完全長cDNAを過剰発現させた遺伝子探索システム(FOX gene hunting system)はゲノムワイドな可能不可分析手法である。FOX株のスクリーニングには多様な代謝物群を検出できる高速メタボロミクス法が求められる。フーリエ変換近赤外(FT-NIR)分光法にケモメトリクス法を組み合わせた解析手法は、代謝物の指紋領域(フィンガープリント)を分析するために用いられてきた。FT-NIR分光法はサンプルを破壊することなく固体サンプルを測定可能であることから、本法により代謝物の構成成分の変化に着目した高速スクリーニングを行うことができる。そこで我々は、イネ遺伝子をシロイヌナズナに挿入したrice-Arabidopsis FOX株の種子3000ラインに対し、FT-NIR分光法による非破壊高速代謝物フィンガープリンティングを行った。本法で得られた候補ラインは、ガスクロマトグラフ―飛行時間型質量分析計により代謝物プロファイリングを行った。これらのデータはorthogonal projections to latent structures (O2PLS)を用いた多変量回帰法により統合し、FT-NIR分析から予測可能な代謝物群の評価を行った。その結果、候補株のrice-Arabidopsis FOX ラインから特有のメタボタイプを検出することができた。故に、本法は代謝に関連するイネ遺伝子の機能探索に有効である。

Fig. 1

図1 51ラインを含むFT-NIRスペクトルデータセットの主成分スコアプロット
第1主成分対第2主成分のプロットを示す。各色の記号は独立ラインを表している。楕円はHotteling's T2 statistic (α= 0.05)に基づくモデルの信頼領域を示す。


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